【講義内容】
描画テスト
講義1 HTPPテスト(高橋依子)
描画テストは言葉で表現できない心の内面も理解できるので、人のパーソナリティを理解して必要な援助を行うために、心理臨床場面でよく用いられる。描画テストの中に、家、木、人を課題として、多面的に人を理解しようとするHTPPテストがある。4枚法によるHTPPテストについて、標準的な実施法と基礎的な解釈法を、実例を示しながら解説し、HTPPテストがどのような目的で実施され、どのようにすれば役立つかを考えていきたい。さらに、描画に表現されたものを正しく理解するためには、描画後のクライエントとの対話も重要であり、描画をともに味わいながら、クライエントに共感し、クライエントが表現し、伝えたい事柄をくみ取っていく方法についても考えていきたい。
講義2 バウムテスト(阿部恵一郎)
描画テストは被験者のパーソナリティ、行動特徴、知的水準、対人関係、家族関係などを理解するために紙上に「何か」を描かせる方法である。病院、教育相談機関、児童相談所、大学などに勤務する臨床心理士を対象に心理検査の使用頻度を調べた小川によれば、第1位がバウムテスト、第7位がH-T-P、第8位が風景構成法である。ロールシャッハ法、TAT、SCTなどの投影法が特定の刺激を与え、それに対する反応を求める形式であるのに対して、描画法は自由な表現や創造を求めるものである。
今回は、拙著『バウムテストの読み方』で示したように。3枚法によるバウムテストを紹介しながら、象徴的解釈とは異なる方法を示したいと思う。
阿部惠一郎(2013) バウムテストの読み方―象徴から記号へ 金剛出版
描画療法
講義1 描画を介した対話(阿部恵一郎)
臨床に描画を用いるには2つの側面がある。一つは検査、もう一つは心理療法である。心理療法は指示的(directive)なものや支持的(supportive)なもの、あるいは理論的には精神分析、認知行動療法など様々である。例えば精神分析では表現媒体として用いられるのが言葉であり、自分が言葉を用いて「自己を表現する」に対して、描画療法ではクライエント(被験者)とカウンセラー(検査者)の間に描画が置かれ、描画が「自己を語る」ので、自己は絵の背後に隠れてしまう。逆説的に言えば、より防衛されて自己が表現される。それが描画療法のメリットである。バウムテスト(木の絵)を用いながら、心理療法がどのように展開されていくか実例を挙げながらお話ししようと思う。
講義2 描画療法の基礎(高橋依子)
心理的な問題を持つ人々に対して、心の健康の回復を援助するためには、カウンセリングなどの言語を用いる心理療法が行われる。しかし、中には、言葉では自分自身の問題を語れないクライエントもいる。その場合に、非言語的な方法を用いることがある。非言語的な手段としては、絵画・粘土・彫刻・陶芸など、さまざまな表現活動を用いるものや、音楽療法や箱庭療法などがある。その中で、絵を描く心理療法が描画療法である。心理臨床家に見守れた場面での描画により、人は自分の感情を表出し、描いた絵を共に眺めることで、自分自身を客観視でき、さらには、自分では気づかなかった心の内面に気づいていけるのである。そのような描画療法の基礎的な実施法や、理論的背景について解説したい。
【参加資格】臨床心理士や精神医学、その他の専門職および臨床心理学を専攻する大学院生等、
守秘義務を負っている方
【事例提供】
11月15日の事例検討で取り上げる事例をコース毎に1件ずつ募集いたします。
ご希望の方は、提供する事例の概要をA4一枚(様式任意)にまとめて、参加申し込みの際にメールに添付下さい。採否は事務局からお知らせいたします。
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