開催案内
- 会期(配信期間)
- 2021年11月5日(金)~12月24日(金)
- 会場(開催形式)
- オンライン開催(オンデマンド形式)
- 大会運営
- 日本描画テスト・描画療法学会第30回大会運営委員会
〒603-8301 京都市北区紫野北花ノ坊町96
佛教大学教育学部臨床心理学科松瀬研究室気付
E-mail: byoga30@bukkyo-u.ac.jp ※@を半角に置き換えてください。
プログラム
(1)第30回大会特別講演(概要)
- 「描画テストと描画療法の架け橋」
- 高橋依子(大阪樟蔭女子大学名誉教授、日本描画テスト・描画療法学会会長)
心理臨床において、描画は心理テストとしても心理療法としても用いられる。30年間、本学会とともに歩んできた演者は、描画を両方の領域で用いてきた。対象者のパーソナリティを理解するために実施した描画テストが、対象者の心に働きかける心理療法として機能することもあった。また、描画療法として描かれた絵から対象者をより深く理解できることも多かった。描画を通して心理テストと心理療法を結んでいくためには、どのようにしたらよいかについて語りたい。
(2)第30回大会特別コンサート
- 「ことば、おと、そしてイメージ」
- 詩朗読 谷川俊太郎
ピアノ 谷川賢作
司会 真栄城輝明
(3)認定描画療法士研修会 基礎コース(NK①~⑤)
- NK① 描画による支援の基礎と職業倫理
- 生地 新(北里大学大学院医療系研究科)
<概要>
この講義の目的は、描画という方法を用いて、専門家として問題を抱えている人を支援するということがどういうことなのか、その際にどのような心構えや倫理上の配慮が求められるのかについて、受講者が深く考えていくための基礎的な知識や材料を提供することである。最初に、人を支援する目的と支援の方法について論じる。次に、人を支援する際の倫理について、ハラスメント、多重関係、守秘義務、研究倫理に分けて、具体例をあげて説明する。 - NK② 心理アセスメントの基礎
- 寺嶋繁典(関西大学)
<概要>
心理アセスメントとは、心理学的な手段を用いてクライエントのパーソナリティや、クライエントの抱えている課題を理解し、支援のための有効な方法を見出すという重要な役割を有している。アセスメントの場面では、生物・心理・社会に関わる情報を科学的観点から広く収集する必要がある。主な情報源は面接や行動観察、心理テスト、医学的所見などである。本研修では、心理アセスメントの過程を紹介しつつ、各情報源から得られる情報の性質と、これらの情報を統合した心理学的報告書の作成などについて理解を深める。 - NK③ 心理面接の基礎
- 鈴江 毅(静岡大学)
<概要>
心理面接とは、心理的な困難を解決しようとしている相談者とそれを支援する者との関係性の進展と終結の過程で、主に相談者の自己洞察と自己成長を促すための心理的空間であり、支援をする者の理論や技法に基づいた行為のことを意味します。この研修では、心理面接の基礎として、「受容」「傾聴」「共感的理解」についてあらためて考え、自らの態度や技術を振り返る機会としたいと思います。 - NK④ 描画による心理アセスメントの基礎
- 香川 香(関西大学)
<概要>
描画テストは、絵という非言語的媒体を用いて、言葉では十分にあらわせない心の状態をとらえることができる貴重なツールです。臨床現場において、描画テストを活用して的確な心理アセスメントを行うためには、描画テストの適用範囲や、実施法、解釈法について習熟している必要があります。本講義では、描画テストの概要と実施および解釈における留意点について解説し、心理アセスメントにおいて、描画テストを活用する意義を検討したいと思います。 - NK⑤ 描画による心理面接の基礎
- 寺沢英理子(田園調布学園大学)
<概要>
最初に心理面接全般について簡単に概観し、心理面接に描画を用いる意味についてお話していきます。描画療法の実際を学ぶことは、心理面接の基本やコツを可視化した形で振り返ることにもなります。たとえば、クライエントを大切にするというような基本的なことも、非常に具体的なセラピストの働きとして目に見えるものとなります。したがって、特に初学者の方が描画療法を学ぶことは、心理面接の基礎を理解し身に着けていくこと全般に役立つものとなると思います。
(4)ワークショップ(W1~W8)
- W1 関係作りの描画法入門
- 馬場史津(中京大学)
<概要>
「描画テスト」は作品から描き手のパーソナリティを理解することにあります。
一方で、「描画療法」は表現すること、それ自体にも大きな意味があります。
さらに描画療法では、描画を通じてそっと寄り添ったり、困らせたり、描き手と援助者が関係を始めることを目的とする技法もあります。
今回はオンラインのWSとなり、みなさんと一緒に体験し、共有することはできませんが、これから描画法を始める方にとって「描くこと」「かかわること」について考える機会になればと思います。 - W2 自分のイメージと大切なもののイメージ
―描画における言語・非言語統合カウンセリング― - 新宮一成 (奈良大学特別研究員・京都産業大学保健診療所医師)
<概要>
私たちの「心」が自分を外部の何かに「映し出して」いるとき、何が起こっているのでしょうか。きっと、その外部の何かの上で、非言語的な経験と言語的な体験とが統合されています。それによって、「心」は、外の何かに「託して」自分を表現できます。そこで表現されているものは何でしょうか?「自分」という要素と「大切なもの」という要素の組み合わせです。自分とは基本的に「消えたもの」ですし、「大切なもの」は「失われたもの」のことです。今回、蘭香代子先生の創出になる「童話療法」を用いて、この二つの基本的な要素の表現を、紙の上に描出してみます。 - W3 バウムテスト入門 開催中止
- (中島ナオミ 元関西福祉科学大学)
- W4 動的家族画と動的学校画の実施と臨床活用―理論から臨床まで―
- 橋本秀美(跡見学園女子大学)
<概要>
バーンズとカウフマン(1970,1972)により、人物画や家族画に動的要素を加味した動的家族画(KFD)が確立され、静的なものに力動性が加わり、質・量ともに獲得情報が増加し、多義的な臨床的知見が得られる新しい次元の描画法となった。さらに、ノフとプラウト(1985)が、動的家族・学校描画システム法を開発した。これらの描画法は、自分自身のこと及び家族や学校の問題を語ることが難しい学校臨床だけでなく、成人の臨床にも有用に活用されている。本WSでは、KFDとKSDの技法及び分析指標を紹介し、アセスメントから治療まで、様々な臨床に用いられた描画とその事例も紹介する。実践に役立つ技法と臨床描画の解釈や分析を提供したい。 - W5 神経発達障害児・者への臨床描画の活用
「自分らしく生きる」ことへの理解と支援を中心に - 木谷秀勝(山口大学)
<概要>
神経発達障害児者に臨床描画を適用する場合、従来は「障害」の程度を中心にしたアセスメントであり、精神力動的な視点から解釈を進める傾向が強かったことは確かです。ところが、近年の当事者が語る「豊かだからこそ、傷つきやすい心の世界」への理解とともに、障害特性を抱えながらも「自分らしく生きる」姿とそこから生じる葛藤への理解が重要であることがわかってきました。そこで、今回は、多くの神経発達障害児者(特に、自閉症スペクトラム障害)の事例を紹介しながら検討を深めます。 - W6 高齢者(認知症)への描画の活用―第2講―
- 小海宏之(花園大学)
<概要>
わが国は超高齢化社会を迎え,それにともなう認知症高齢者の増加が社会問題になりつつあり,とくに認知症高齢者に対する適切なケアを行うためには,詳細で正確な心理アセスメントを行うことが重要となる。そこで,高齢者とくに認知症者への描画の活用について,神経心理学的アセスメントおよび臨床心理学的アセスメントの双方を俯瞰して概説し,随時,各検査を体験してもらいながら,脳機能を含めた解釈法について考える機会としたい。 - W7 描画体験から考えるバウムテスト解釈
- 奥田 亮(大阪樟蔭女子大学)
<概要>
バウムテストをどのように解釈するか、については様々な立場がありますが、バウムの描き始めや幹、樹冠、根など、各部を描いている時に、それぞれどのような体験が起こっているのかについて、一定の理解や視点を持っておくことは、描画者のアセスメントに深みをもたらします。このワークショップでは、そのようなバウムテストの追体験的理解について、実際に描画することも交えながら、お話したいと思います。 - W8 現代の思春期・青年期にみられるS-HTPの描画特徴 開催中止
- (纐纈千晶 東海学院大学)
(5)研究発表・事例検討
(6)シンポジウム
- テーマ「臨床イメージの働き」
- 指定討論者:藤原勝紀(京都大学名誉教授・公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会専務理事)
<概要>
「投映法における臨床イメージ」 松瀬喜治(佛教大学教育学部臨床心理学科教授)
臨床イメージとは「生身の人と人との間に繋がりとしてある関係性を前提としてお互いに影響し合う創造的なエネルギーを掻き立ててくる心像である」と藤原勝紀(2002)は、定義している。今回のシンポジウムでは、このようなクライエントとセラピストの間に生起する臨床イメージの働きを、心身症、自己愛性人格障害等のクライエントとの心理臨床の実際から、その有用性の例証を試みたい。
「箱庭と臨床イメージ」 石原 宏(島根大学人間科学部准教授)
箱庭療法は、イメージを用いる心理臨床技法のなかでも、砂やミニチュア玩具などの「モノ」を用いるところにその特徴がある。箱庭が心理療法として機能する仕掛けも、クライエントの体験においてモノとイメージが交錯するところにあると考えられる。また箱庭は、クライエントが自らの身体を通して創られていくことも見逃せない特徴と言える。今回のシンポジウムでは、箱庭と臨床イメージについて、モノや身体をキーワードに考えてみたい。
「内観における臨床イメージ」 真栄城輝明(大和内観研修所・所長)
内観の創始者・吉本伊信が開設した内観研修所は、当初、「内観道場」と呼ばれていた。
日常生活から離れて非日常の世界に籠って行われる集中内観の舞台である内観道場は、譬えて言えば、能舞台のイメージがある。トーマス・インモーンス氏の「西洋の劇、シェイクスピアでは何かを演じるが、日本の能では何かが顕れる」という言葉を借りれば、西洋のサイコセラピーと違って、日本の心理療法・内観では、実に多彩なものが顕れてくる。